補聴器について
補聴器について
補聴器はおおまかに音を伝える手段、形状、価格により分類されます。
音を伝える手段による分類
- 気導補聴器 空気を音波の媒体として鼓膜に振動を伝えて聴感をもたらすもので、補聴器と言えば一般的には気導補聴器のことを指します。後述のごとく目的に応じて多くの種類があり様々な難聴に対応できます。慢性中耳炎や、外耳道閉鎖症のような特殊な症例以外は、気導補聴器の適応になります。
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骨導補聴器
鼓膜や耳小骨などの伝音系の障害で鼓膜に振動を伝えても効果がみられないときは、頭蓋骨(主に側頭骨)に振動を伝えて聴感を得る方式です。
皮膚の上から圧着して振動を伝える眼鏡型やカチューシャ型と、直接骨にインプラントを埋め込み振動を伝えるBAHA(Bone-Anchored Hearing Aid)とBONEBRIDGEがあります。
気導補聴器と違い骨導聴力が50dBを超えると補聴が困難になります。
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軟骨導補聴器
耳介の軟骨特に耳珠に振動を与えると良質な聞こえが得られることがわかり、耳介軟骨に振動子を圧着する軟骨導補聴器が2017年に販売が開始されました。適応は骨導補聴器の適応症例とほぼ同じです。特徴は、圧着型の骨導補聴器のように強く皮膚に圧着する必要がないので皮膚の痛みは少ないようです。
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人工内耳
人工内耳は補聴器の範疇ではありませんが音声の情報の伝え方が補聴器と全く異なります。補聴器は内耳に振動を届けるのが目的です。
内耳に音声の振動を電気信号に変換する機能が少しでも残っているのが前提です。内耳機能が消失している症例では補聴器は使えません。人工内耳は、蝸牛(内耳)内に電極を挿入し電気信号を直接蝸牛神経に伝えて聴感を得る仕組みです。
つまり人工内耳は内耳機能を代行する人工臓器です。人工内耳は埋め込み術が必要で、当科では取り扱いがありません。
気導補聴器の分類
形状のバリエーションの多様さは気導補聴器にのみに許されていますのでその形状につき述べます。
耳掛け型
- BTE(Behind The Ear) かつては耳掛け型と言えばBTEでした。レシーバ(スピーカー)が本体に内蔵されており、音声はフックとチューブと耳栓で外耳道に誘導します。特徴は高出力に対応できるところです。
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RIC(Receiver In the Canal)タイプ
レシーバを外耳道内に入れることにより音響的なひずみを低減し、より自然な聞こえを実現します。特別な高出力が必要でない限り耳掛け型は、現在ではRICタイプが主流になってきています。
耳穴型
耳穴型補聴器を大きい順に紹介します。小さいほど奥に入り音は自然になりかつ目立ちにくくなりますが、出力の限界が低く高度難聴には向きません。またBluetoothなどの通信機能付きや充電式はITC以上の大きさになります。
- ITE(In The Ear)フルシェル
耳甲介腔にすっぽり入る大きさです。 - ITC(In The Canal)
耳の穴から出る程度の大きさです。 - CIC(Completely In the Canal)
耳の穴に全体が入る大きさです。 - IIC(Invisible In the Canal)
耳珠に隠れて前方からは全く見えない大きさです。
ポケット型
箱型の本体からイヤホンをつないで耳に挿入する形式ですが、現在ではほとんど取り扱いがありません。
価格(グレード)について
グレードと環境適応性
自宅/テレビ | 二人での会話 | 食事 | アウトドア | 音楽 | グループでの会話 | レストラン | 旅行/ショッピング | 居酒屋/パーティー | 車内 | 鑑賞(観劇) | 人混み |
エコノミー 1000 10ch 8kHz |
ベーシック 1200 12ch 8kHz |
スタンダード 1600 16ch 10kHz |
プレミアム 2000 20ch 10kHz |
エクスクルーシブ 2400 24ch 10kHz |
※上部へ行くほど「値段・グレード」が高いものとなります。
ベーシックな機種とハイエンドの機種とでは価格が数倍も違います。
何が違うのかよく質問をいただきますがその違いは一言では表せません。音質や機能が違うのですが、それについて説明いたします。
音質
音質は主にひずみ率に起因すると考えられております。グレードの高いものはひずみが少ないように思われます。
チャンネル数
補聴器がデジタル化してからは、周波数をいくつかの帯域に分割し帯域ごとに出力を調整できるようになりました。その帯域の数をチャンネル数と言いいそれが多いほどきめ細かな調整が可能になります。外耳道内で共鳴が起こっているときはそれを抑えるのにチャンネル数の多さが真価を発揮します。
騒音抑制機能
音声信号とそれ以外の信号を分離し音声信号を強調する機能です。もちろんこれにも等級があり値段による差はあると考えています。
環境適応機能
静かなところでは騒音抑制を切り、騒音環境下では騒音抑制を効かせ、また人ごみの中では指向性を効かせ、目の前の人の声を集中的に増幅したりしてあらゆる環境に対応した機能はやはりハイグレード機種にしか備わっておりません。(環境適応機能のシェーマ)
指向性
前項でものべましたが、能動的な指向性はハイグレード機種に見られます。
周波数圧縮および周波数変換
高音急墜型感音性難聴難聴(ある周波数から異常が一気に高度難聴となる聴力)では、2kHz以上が聞こえないとか4kHz以上が聞こえないということが多く、サ行とかカ行の聞き取りが悪くなります。
kとかsの子音の周波数が高いために聞き取れないのです。そこでkとかsの周波数を聞こえる帯域まで周波数を変換する技術です。
周波数を変換しますのでそのまま自然な発音には聞こえませんが、そこに子音があることがわかるので練習によりサ行やカ行の聞き取りができるようになります。この機能も値段によって効果が違ってきます。
保証期間
最近は2年保証をついている機種が増えました。上位機種は保証期間が3年になっているのが普通になりました。
補聴器が役に立つ最低条件
- 処方式に応じた音圧が鼓膜に届いていること
- 聴覚リハビリテーションが完了していること
上記の2つが最低条件です。しかも2を完了するには1の条件を満たしていることが前提です。1,を満たすために数ある補聴器の中から間違いのないチョイスをする必要があります。
その2つの条件を満たすための設備
- 補聴器の効果判定のできる防音室
- 音場検査装置
- 実耳挿入利得測定(鼓膜に実際に届いている音圧の測定)ができる設備
当院はすべて完備しておりますのでお任せください
当院は、医療機関と補聴器販売店が別組織だと患者さんに対して非常にご不便をおかけすることになると考え、診療所が補聴器のワンストップサービスを行うべきであると考え実現しました。
当院で取り扱うメーカー
- オーチコン
- シグニア
- スターキー
- フォナック
- リオネット補聴器
- リサウンド
- ワイデックス
- ベルトーン
補聴器の種類
補聴器は、耳掛け型と耳穴型があります。最近では、充電式のものも普及してまいりました。Bluetooth搭載のものもあります。
補聴器も日進月歩です。症状やご希望により最善の種類の補聴器をご提案いたします。
補聴器を装用する前に
補聴器を装用する前に診察にて以下の項目を確認します。補聴器が装用できない、あるいは注意する必要があるなどの場合があります。
確認すべき6項目
- 耳の手術を受けている
- 耳漏がある
- 最近1か月以内に聴力が低下した
- 最近1か月以内に急に耳鳴りが大きくなった
- 外耳道に痛みやかゆみがある
- 耳垢が多くたまっている